école crème et métier blog
  • midori kato

運命のお菓子、キャトルキャール

更新日:4月27日

キャトルキャールと言うと、食べたことないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、パウンドケーキのことですよ、と言うと、あ、それなら食べたことあります、とみなさん安心してくださいます。


私の初めてのキャトルキャール体験は、日本からパリの星付きのレストランに修業に来ていたキュイジニエの Y くんの奥さん、あっこちゃんが作ってくれたキャトルキャールです。


あっこちゃんは私と同い年で、パリで最初にできた日本人の女友達。ある日、パリ15区のモトピケ駅の近くに住んでいた、あっこちゃんたちの小さなステュディオに遊びにいったとき、「みどちゃん、キャトルキャール食べる?」と、コーヒーと一緒に手作りのキャトルキャールを出してくれました。


それまで正直、お家で誰かが作ってくれたお菓子で、記憶に残るほど美味しいと思ったものに巡り合ったことがなかったので、「ありがとう」と受け取りながら、そんなに期待していなかったのです。


それが、一口食べて、びっくり。「美味しいじゃん!」と、驚いたのを、いまだにはっきり、覚えています。


「これ、どうやって作ったの?」と聞くと、あっこちゃんはさらりと、「バターと砂糖と卵と小麦粉をな、混ぜてな、それをな、型にいれて、オーブンで焼くねん」と一言。


「え? それだけ?」

「そうやで。あ、あと、ベーキングパウダーをちょっと入れるわ」

まさか、そんなシンプルな素材で、こんな美味しいものを作りだすなんて、この人、いったい何者?と、本気で思いました。


今思えば、あのときのあっこちゃんのキャトルキャールは、一口でいろんなメッセージを私に伝えてくれた運命のお菓子で、あのとき、私はキャトルキャール・マジックにかかってしまったんです。


まず、手作りなのに、このクオリティ。

今思えば、あっこちゃんは、キャトルキャールのコツを、きちんと理解している人だっただけなんですが……。あっこちゃんが、あんまり簡単そうに言うので、もしかしたら自分もいつかなにかの拍子に、こんな美味しいキャトルキャールが作れるんじゃないかな?と勘違いしてしまいました。


そしてフランスの風味豊かなバターと、空と大地が育てた挽きの粗い味わい深い小麦粉、滋味あふれる卵。たぶんあっこちゃん、モトピケ近くのモノプリあたりで買った、ごく普通のバターや卵で作ったに違いないのですが、まったく問題なく美味しい、フランスの素材のすばらしさ。


そしてなによりも、バターってバゲットに塗るもの、くらいにしか考えていなかったのに、このバターという脂肪の塊は、作り方次第で、いろんなものに形を変えて、いろんな味わいを生み出すことができるものなんだ……。その、ものすごいアルケミー感!


まさかその先の未来、自分がお菓子を人様に教えることを生業にすることになるとは、夢にも思っていませんでしたが、この時の私は、一切れのキャトルキャールに、深く感動したのでした。


キャトルキャールは私のフランス菓子の入り口。あれから30年以上経ちますが、いまだにこのなんの変哲もない、そして愛すべきキャトルキャールを、作り続けています。

閲覧数:18回0件のコメント

最新記事

すべて表示