
30数年前、初めてパート・ド・フリュイを食べたとき、衝撃を受けたのですが、
その理由は、見た目のスーベニール感から考えると、信じられない味だったのです。
だいたいお土産ものって、こんくらいの味なら合格じゃない?くらいの感覚ってありませんか?その予想を見事に裏切ってくれる美味しさに、驚きました。
フルーツの味がしっかり残っているのはもちろん、それぞれのフルーツの酸味がそのままなのが、すごい。
カシスならカシスの酸味、パッションフルーツならパッションフルーツの酸味が、ちゃんとあの小さなパート・ド・フリュイにはとどまっているんです。
銅のボウルにピューレを入れ、お砂糖とペクチンを入れて、マグマのように煮えたぎるピューレを、かき混ぜながら作っていくのですが、煮詰め具合にコツがあって、煮詰めすぎると、味が飛んでしまって美味しさがでてこないし、煮詰めが浅いと、やわらかくて、べたべたする、歯にくっつく、まあいわゆる不愉快な食感になります。
そして、作ってから丸1日、常温で固めたあと、カットして半日は超低温オーブンで乾燥焼きをする必要があります。
一度にそこそこの量が出来上がるので、いつも作るときはどきどきしながら、作っています。
30数年前、パート・ド・フリュイを食べたとき、まさか自分でパート・ド・フリュイを作れる人になっているなんて、夢にも思っていませんでした。
あの頃、パリで、フランス語も全然上達しないし、バイト先のおじさんには怒られてばかりだし、お金もないし、不満だらけで、ムッシュに文句ばかり言っていましたが、今になって振り返ると、あの時間がなかったら、現在の自分はいなかったんだろうなーと思って、ちょっとしみじみします。
いつのまにか、パート・ド・フリュイも、とてもノスタルジックな味になってきました。
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